GSX1200S

長らくご愛顧いただきましたGSX1200Sにつきまして、2020年にて生産を終了させて頂きました。永年に渡りご愛顧いただきありがとうございました。

コンセプト

「長年に渡ってGSX1100Sカタナに携わってきたなかで、足廻りを変更したカスタム車両や、それに伴うカスタムパーツを多数製作しました。しかし、シャーシ設定の良さを知ると同時に、ある限界にも気付きはじめたのです」

ユニコーン ジャパン代表池田氏はGSX1200S開発のきっかけについてこう語る。「次世代の“スポーツライディングできるカタナ”を創り出したい」と考えていたのだ。前から気になっていたのは、スズキ伝統の油冷エンジン。軽量コンパクトでバンク角も深いエンジンなのだが、サイズがあまりにも1100カタナと異なり、1100カタナのフレームに搭載するのには迷いがあった。位置が決まらないのだ。前側にエンジンを積むと、ドライブシャフト〜ピボットシャフト間が離れすぎてしまい、アンチスクワットが狂って正常なサスペンションの動きを妨げてしまう。かといって、ドライブシャフトをピボットシャフトに近づけるとエンジンが直立し、後方に重心が移動するため、必要なフロント荷重が抜けてしまう。どのように積んだとしてもスポーツライディングをする適正なディメンションから外れてしまうのだ。そういう理由から、ユニコーン ジャパンでは今まで1100カタナのフレームに油冷エンジンの搭載は一台も行ってこなかった。

しかし「イナズマが発売されたんです」それは現代の足廻りと油冷ユニットを適正な位置に搭載した「理想のダブルクレードルフレーム」の登場だった。しかもCVK32という小径キャブレターの流速の速さとTPS(スロットル・ポジション・センサー)による最適な点火時期の設定により鋭いピックアップを実現した油冷ユニットは“スポーツするカタナ”には最適だった。そこに今まで培ってきたカタナの技術を投入し1100カタナの存在感とライト・ウエイト・スポーツとしての軽快感を融合させたのがこのGSX1200Sである。

完成までに多くのライダーによりテストを繰り返した。その中にはプロばかりではなく一般のライダーも含んでいた。いやむしろ普通のバイク乗りの方が多かった。なぜなら目指していたのは「誰もが楽しくスポーツ・ライディングできるカタナ」だったからだ。一部のマニアを満足させるだけではなく、いわば「普通のライダーが普通に乗れる」カタナを作ることが開発目標だった。ロングツーリングにも行けて、ワインディングやサーキット走行も楽しめ、普通のメンテナンスで性能を維持できる。幾度もテストを繰り返して完成し、世に送り出されたGSX1200Sはすぐに多くのライダーに受け入れられ、約1年あまりで限定数の50台が完売。しかし今でもその「スポーツ感」に惹かれた人からの問い合わせが絶えない。現在では一部仕様を変更して受注生産という形で対応している。
(Text/K.Yokota)

スタイル

GSX1200SのスタイリングはGSX1100Sカタナの基本デザインを踏襲しつつ、ライト・ウエイト・スポーツらしい躍動感が加味されたもの。やや前下がりの車体姿勢と17インチホイールがアグレッシブなイメージを感じさせる。細かいフィンが印象的な軽量・ハイパワーな油冷エンジンとバンク角を考慮した集合マフラーが特徴

コーナーリングマシンらしくショートホイールベースでマスの集中したディメンションが良くわかるサイドビュー。もともとカタナのライディング・ポジションは人間工学的にも優れているものだが、GSX1200Sではさらにスポーツライディングを楽しめるようリ・セッティングされている。

このアングルから見るカタナのスタイリングは絶品。流れるようなスタイリングはスポーツを感じさせる。極太鋼管を使用したダブルクレードルフレームに43mm正立フロントフォーク、アルミ角断面スイングアーム、別体式タンク付リアショックで構成されるしなやかな足廻りがライト・ウエイト・スポーツの走りを実現する。

「これはまぎれもないKATANAである」横内悦夫氏はGSX1200Sの各部を見入った後、そう語った。横内氏は元SUZUKI二輪設計部長で、GS、GSXシリーズを手掛けたいわばGSX1100SKATANAの生みの親である。氏は油冷エンジン開発の中心的人物でもあったため、この「油冷KATANA」は正に横内イズムの集大成でもあるのだ。

※ PHOTO…バイカーズステーション2000年1月 No.148より転載

装備

エンジン

4500rpmで10.0kg-mのトルクを生み出す1156cc、DOHC16バルブエンジンは油冷という冷却システムを採用。エンジンの熱をオイルの循環よって積極的に冷やす仕組みで、水冷のような複雑な冷却システムを必要としないのでコンパクトで軽量化に有利。また外観も細かいフィンを持ちブラックアウトされたシリンダーブロックとバフ掛けされたカバー類とのコントラストが美しく、造形美も持ち合わせている。

スロットル低開度時の点火時期を最適化してレスポンスと燃費を向上させるTPS(スロットルポジションセンサー)付32mm小径キャブレターが、吸気系の流速を上げてトルク感を向上させ、滑らかな加速感を発生。街乗りからスポーツ走行まで幅広くカバーする。

4-1タイプのエキゾーストパイプはステンレスの二重管構造で、迫力のある美しい外観と高排気効率を実現している。

足回り

フロントにはインナーチューブ径43mmの高剛性大径フォークを採用。リアに装備する5段階にイニシャル調整できるアルミ2ピース構造の別体式タンク付ガス分離加圧式倒立リアショック、軽量・高剛性のアルミ角断面スイングアームとともにスポーツ・ライディングを支える。

フロントブレーキは310mm径の大径フローティングディスクローターにアルミ、異径ピストンを採用したブレンボ製4ポットキャリパーを装備、強力かつ扱いやすい制動力を発揮する。リアブレーキはトキコ製2ポットキャリパー。車体姿勢のコントロールをしやすくし、コーナーアプローチ時に効果を発揮する。(写真の車両はホースをステンレスメッシュに変更)

フロント3.50-17/リア5.50-17インチホイールにはそれぞれ120/70-17、170/70-17という太すぎないタイヤを装着、ライト・ウエイト・スポーツの軽快な走りを実現している。

■ 寸法・容量・重量
・全長/2,140mm
・全幅/780mm
・全高/1100mm
・ホイールベース/1,465mm
・キャスター/25.50度
・トレール/102mm
・燃料タンク容量/20リットル

スタイリング

1100カタナと同形状のフロントカウルはヘッドライト上部がカーボン製のオリジナル。スクリーンは表側は虹色に輝き、裏からはスモークのチタンコートスクリーンを採用。また2003年生産車からヘッドライトはRAYBRIGマルチリフレクタータイプとなっている。

コンビネーションメーターは1100カタナと同じ240km/hフルスケール。剛性と質感の高いアルミ削り出しトップブリッジとアンダーブラケットを装備。トップブリッジには初期の50台にはシリアルナンバー入り真鍮プレートが付くが、現在の受注生産車にはK-UNICORNマークの真鍮プレートが付く。スポーツライディングに最適なポジションを構成する3次元可変式ハンドルは現在TooBrothers製になる。

スムーズで心地よいシフトチェンジを提供するステップもアグラス製ベアリング内蔵アルミ削り出しが採用されている。

シート表皮は汚れに強く、滑りにくいスウェード調のオリジナル表皮となる。テールカウルもカーボン製の専用品。

スペック

全長 2,140mm
全幅 780mm
全高 1,100mm
ホイールベース 1,465mm
最低地上高 125mm
シート高 770mm
乾燥重量 208kg
エンジン形式 油冷・4サイクル・4気筒
弁方式 DOHC・4バルブ
総排気量 1,156cc
ボア×ストローク 79.0×59.0mm
圧縮比 9.5:1
最高出力 100ps/8,500rpm
最大トルク 10.0kg-m/4,500rpm
キャブレター形式 CVK32(TPS装備)
燃料タンク容量 20リットル
クラッチ形式 湿式多板ダイヤフラムスプリング
変速機形式 常時噛合式5段リターン
ブレーキ形式(前) brembo-4POT×2
ブレーキ形式(後) TOKICO-2POT
タイヤサイズ(前) 120/70ZR17(58W)
タイヤサイズ(後) 170/60ZR17(72W)

※仕様は改良のため予告無く変更することがあります。

モディファイド

GSX1200Sをベースにさらにスポーツ走行の楽しさをさらにアップさせるためモディファイを施したスペシャル・カタナ。レッド/パールホワイトのオリジナルカラーとアップマフラー、やや前傾の低いシルエットが特徴。軽量ホイール、各部カーボンパーツやオリジナルパーツでSTDより大幅に軽量化してあり、ライト・ウエイト・スポーツのポテンシャルをより発揮することができる方向に手を加えている。

ブレーキのコントロール性を高めるためブレンボラジアルポンプマスターシリンダーを採用。クラッチ側にも同社製品がセットされる。リザーバータンクステーはワンオフ。ブレーキホースは耐久性の高いステンレスフィッティングを採用したステンレスメッシュタイプ。スロットルはアントライオン製薄型ハイスロットル(ステンレスケーブル)で操作性を向上させる。低い位置にセットされたバックミラーはナポレオン・バレンTTミラー。

ワンオフ制作されたキャリパーサポートで取り付けられるブレンボ削り出しレーシングキャリパーと同じくブレンボ製310mm径鋳鉄ローターの組合せで強力かつコントロール性に優れたブレーキ性能を確保。フロントフォークはオリジナルスプリングとカラーによるリセッティングが行われている。ホイールはドゥオーモ製(3.50×17、6.00×17)をスペーサーを製作して取り付けている。

TMRキャブレターは大口径化による流速の低下がスポーツ感をスポイルする事を嫌い、あえて36mm径を採用する。エアクリーナーは外され、K&Nパワーフィルターを装着して全域でパワー&トルクアップするセッティングをしている。40mm径とのパワー差はピークで数馬力でしかなく、低中速を多用する街乗りメインのユーザーには(GSX1100Sも含めて)ピックアップの良い36mm径を勧めている。

ミクニレーシング製のクラッチレリーズプレートは高級感があり、軽量化にも一役買っている。クラッチホースもステンレスフィッティング+ステンレスメッシュホースに交換してあり、クラッチフィーリングをダイレクトなものにしている。バックステップのチェンジペダル支持部にはボールベアリングを内蔵、滑らかで心地よいシフトフィーリングを実現している。

連結部にラバーブッシュを内蔵したアルミステーを使用してオリジナルスリップオンサイレンサーをSTDより高い位置で支持し、より大きなバンク角に対応している。リアショックも自由長を10mm伸ばしたオーリンズ製フルアジャスタブルでテールを上げ、キャスター角を立てる方向にセッティングし、旋回性を上げてライト・ウエイト・スポーツとしての操縦性を追求している。

※ PHOTO…バイカーズステーション2000年1月 No.148より転載